相続人間で争いが生じると,感情的なものも加わり,深刻な紛争となる場合が少なからずあります。うちだけは大丈夫,という思い込みは禁物です。仲の良かった兄弟姉妹が相続で揉めたがために修復困難なまでに仲たがいしてしまった例も多数見てきました。そのような紛争を回避するのに有効な方法は,遺言を作成することです。
遺言には,自筆証書遺言,公正証書遺言,秘密証書遺言の3種類があります。
自筆証書遺言とは,文字通り,遺言者が自筆で作成する遺言です。
いつでもどこでも,誰にも知られずに作成することができ,遺言の内容はおろか,遺言を作成したこと自体も秘密にしておくことができます。
自筆証書遺言は,次のように作成する必要があります。
① 遺言者が,遺言の全文を自書すること
他人に書いてもらった場合は,無効です。
② 遺言者が,日付を自書すること
③ 遺言者が,氏名を自書すること
④ 遺言者が,遺言所に押印すること
認印でも,拇印でも有効とされています。
私は,自筆証書遺言をあまりお勧めしていません。
なぜなら,自筆証書遺言の場合,上記①から④までの方式に不備があると,無効になりからです。
また,遺言を作成したこと自体を秘密にしておくと,相続が開始したとき,相続人が遺言に気づかない危険性もあります。
公正証書遺言は,公証役場で公証人に作成してもらう遺言です。
公正証書遺言のメリットは,
① 公証人が作成するため,内容が明確で,後日相続人間で遺言の有効性について争いになる可能性も低い。
② 遺言書の原本は公証人が保管してくれる(正本,謄本は遺言者に渡してくれます)ので,隠匿や未発見の危険性が少ない。
③ 老衰して字が書けない遺言者でも遺言を作成できる。
④ 家庭裁判所の検認が不要である。
といった点です。
秘密証書遺言は,遺言者が作成した遺言書に封をし,遺言書が封入されていることを公正証書の手続きで公証するものです。
遺言の存在は明らかにしながら,遺言書の内容を秘密にしておくことのできる方法です。
ただし,遺言書の保管は遺言者が行いますので,紛失・未発見のおそれがあります。
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