弁護士を選ぶとき,どのようなことに注意したらよいのでしょうか。
ほとんどの方は,弁護士に事件を依頼するなんて,一生のうちに一度あるかどうかだと思います。失敗したくないですね。
「こういう弁護士がよい!」という言い方はなかなか難しいものがあるのですが,「こういう弁護士は避けた方がよい」という観点からは,いくつか指摘できることがあります。
【話を聞こうとしない弁護士】
依頼者の話をよく聞こうとせず,勝手に「これはこうなんだ」と決めつける弁護士は,避けた方がよいでしょう。
ご依頼者の意向に沿った解決をしてくれない可能性があります。
【何でも依頼者に迎合する弁護士】
逆に,依頼者の言いなりになる弁護士も,良くありません。
依頼者からすると,自分の話を全て受け入れてくれるので,一見,良い弁護士のように見えます。
しかし,実は要注意です。
ご依頼者は法律の専門家ではありません。ご依頼者が「正しい」と思っておられることでも,法的には通らない,あるいは裁判になると分が悪いということはありえます。
そのような場合に,「法的にはこうなってしまいます」ということをきちんと伝えず,あいづちしかうたない弁護士は,無能であるか仕事に飢えているかどちらかだと思ってよいと思います。
依頼当初は依頼者の言い分を全て聞き入れ,準備書面なども依頼者の言うとおりに書いた結果,いざ敗訴判決をもらった途端,態度を急変させ,敗訴の責任があたかも依頼者にあるかのような言い方をする弁護士もいるようです。
このあたりは後述の【依頼者の文書をそのまま提出する弁護士】に詳しく書いています。
【勝訴できますと断言する弁護士】
一見,頼もしいように思えますね。しかし,一番注意が必要です。
法律相談をし,依頼をするという時点で,弁護士はご依頼者の言い分しか聞いていません。
しかし,裁判は,一方当事者の言い分を聞いただけで判決することはありません。被告が答弁書を出さずに第1回期日を欠席した場合は別ですが。
裁判では,当事者の双方がそれぞれの立場で主張反論を尽くし,証人を呼び,証拠を提出します。
裁判所は,それらの主張反論と証拠を詳細に検討し,結論を出します。提訴から判決までは,事件にもよりますが,簡単そうに思える裁判でも概ね半年から1年程度はかかると思ってよいでしょう。
判決は,そのような慎重な検討のうえに下されるのです。
それをほんの小一時間程度,一方の当事者のお話を聞いただけで,勝訴・敗訴の正確な予想ができるでしょうか。
できるわけがありません。
せいぜい,ご依頼者のお話とそのときお持ちの証拠から考えて,勝訴の見込みがあるかどうかについて所見を述べることができる程度でしょう。
なのに,最近,ちまたでは,「必ず勝訴できます」などといって事件の依頼を受ける弁護士が増えてきているようです。
このような弁護士には,十分に注意をして下さい。
【依頼者の文書をそのまま提出する弁護士】
これは,依頼後,実際に訴訟になってからの話です。
訴訟では,当事者双方が,それぞれの言い分を準備書面と呼ばれる文書にまとめて裁判所に提出します。
準備書面での主張反論の応酬を何度か繰り返し,争点が明確になった時点で,証拠調べに入ります。
事件の事実関係について一番よく知っているのは当事者であるご依頼者です。
ですから,弁護士が準備書面を書くための基礎資料として,ご依頼者に事実関係を文書なりメモなりにまとめていただくことはあります。
しかし,ご依頼者の書いた文書をそのまま準備書面として提出する弁護士には,注意が必要です。
なぜでしょう?ご依頼者からすれば,自分の言い分をそのまま裁判所と相手方に伝えてくれる,よい弁護士ではないか?
全く違います。
先ほどもお話ししたとおり,事件の事実関係を一番よく知っておられるのは,ご依頼者です。
そのため,事件当時,どのような事実関係だったかについては,ご依頼者に教えていただくほかありません。
その意味で,事実関係という「材料」を提供していただくのはご依頼者ですが,生の材料をそのまま右から左にぽいと放り投げて客に出してよいというものではありません。
訴訟の目標は勝訴です。ご依頼者を勝訴に導くために,ご依頼者からご提供いただいた材料を料理するのはあくまでも専門家である弁護士の仕事です。
わざわざ安くないお金を払って弁護士を雇う意味は,その点にあるわけです。
ところで,ご依頼者は訴訟のプロではありませんから,ご依頼者の作成されたメモには,争点と関連しないことも少なからず含まれますし,勝訴するために強調すべきポイントが抜けていたり,逆にマイナスに働きかねないことが書かれていたりします。
このようなメモをそのまま準備書面にするのはプロの仕事ではありません。
ご依頼者のメモをもとに,要らない部分はそぎ落とし,強調すべき点についてはご依頼者に追加で事情を聞き取りし,勝訴するためにプラスに働く可能性があることについては「このようなことはありませんでしたか?」とご依頼者に記憶を呼び起こしていただき,勝訴につながる準備書面を作成するのが弁護士の役目です。
ですから,ご依頼者のメモをそのまま準備書面にする弁護士は,よい弁護士とはいえないのです。
このような弁護士に会ってしまった場合には,事件の途中でもかまいませんので,他の弁護士に相談し,セカンドオピニオンをもらうようにしましょう。
そして,場合によっては,違う弁護士に依頼することも可能です。